遺留分を請求させないための対策——廃除・放棄・養子縁組

相続

あの相続人には私の相続財産を1円たりとも渡したくない。相続財産は全てお世話をしてくれたあの子に渡したいーーそう考える人は少なからずいます。

この記事では、遺言等により法定相続人が相続財産をもらえなかった場合に請求できる遺留分を請求させない対策として法律上認められている手段を整理します。

遺留分とは

遺留分とは、一定の法定相続人(子・直系尊属・配偶者)に対して民法が保障する最低限の財産取得割合です。遺言でどのような内容を定めても、遺留分権利者はその侵害額に相当する金銭を請求する権利(遺留分侵害額請求権)を持ちます。

以下、4つの手段をご紹介します。


方法① 廃除

廃除とは、被相続人が家庭裁判所に申し立て、特定の推定相続人から相続権と遺留分の両方を失わせる手続きです(民法892条)。

廃除が認められる要件は、次の3つに限られています。

  • 被相続人に対する虐待
  • 被相続人に対する重大な侮辱
  • その他の著しい非行

たとえば、長年にわたり親に暴力を振るっていた子や、介護放棄のうえ金銭を騙し取っていたといった事情がある場合に、廃除申立ての対象となりえます。一方、「疎遠にしていた」「気が合わない」といった事情のみでは認められません。

遺言による廃除も可能です(民法893条)。遺言に廃除の意思を記載しておくと、相続開始後に遺言執行者が家庭裁判所に申立てを行います。最終的に廃除が認められるかどうかは裁判所の判断によります。

なお、廃除された者に子がいる場合、その子が代襲相続人となります(民法887条2項)。


方法② 相続開始前の遺留分放棄

遺留分は、相続開始前であっても家庭裁判所の許可を得て放棄することができます(民法1049条1項)。

放棄の申立てを行うのは遺留分権利者本人です。被相続人が一方的に放棄させることはできません。また、ある相続人が遺留分を放棄しても、他の相続人の遺留分には影響しません(民法1049条2項)。

代償金を支払って放棄してもらう方法

たとえば、「財産はすべて長男に渡したいが、次男にも遺留分がある」というケースで、生前に次男と話し合い、一定の金銭を渡す代わりに遺留分を放棄してもらうという合意をするケースがあります。この場合、代償金の支払いを条件として家庭裁判所に遺留分放棄の許可申請を行います。

ただし、許可が下りるかどうかは裁判所の判断によります。また、支払う金額によっては、対策コストが遺留分額を上回ることもあります。


方法③ 生命保険・生前贈与の活用

遺留分の金額は、遺留分算定の基礎財産に一定割合をかけて算出します。この基礎財産の構成を意識することが対策の一つになります。

生命保険の活用

たとえば、財産の一部を生命保険に変えて特定の子を受取人に指定しておくと、その保険金は受取人固有の財産として扱われるため、原則として遺留分算定の基礎財産には含まれません。渡したい相手に確実に渡しながら、遺留分の計算対象となる財産を抑える効果があります。

ただし、保険金額が遺産全体に対して著しく大きい場合は、特別受益に準じて扱われる可能性が判例上示されています(最判平成16年10月29日)。

生前贈与のタイミング

遺留分の算定基礎には、相続開始前10年以内に行われた贈与のうち特別受益にあたるものが加算されます(民法1044条)。逆にいえば、10年より前に完了した贈与は原則として算定基礎に含まれません。長期的な視点で財産を移転しておくことで、結果として遺留分の計算対象となる財産を圧縮できる場合があります。


方法④ 養子縁組

養子縁組によって相続人の数を増やすと、1人あたりの遺留分の金額が下がります。

子の遺留分は相続財産全体の1/2を法定相続分で按分します。たとえば子が2人であれば各自1/4ですが、養子を1人加えて子が3人になれば各自1/6になります。特定の子に渡る遺留分を実質的に減らしたい場合に活用されるケースがあります。

仲の良い孫を養子にするのが典型的なパターンです。孫は通常代襲相続人の候補ですが、養子縁組をすると「子」として独立した相続人となります。法定相続人の構成が変わるため、遺言の内容と合わせて整理しておく必要があります。

民法上は養子の数に制限はありませんが、相続税の基礎控除計算では実子がいる場合に算入できる養子は1人までとされています(相続税法15条2項)。また、遺留分対策のみを目的とした形式的な養子縁組は、無効とされるリスクが理論上あります。


まとめ

遺留分権利者に対して遺留分を完全にゼロにする手段は、法律上非常に限られています。廃除は要件が厳格で裁判所の判断を要し、放棄は権利者本人の申立てが前提です。生命保険・生前贈与・養子縁組は一定の効果がありますが、それぞれ要件と限界があります。

また、どのような手段であれ、法的に認められた遺留分の排除のみを目的として複数の方法を組み合わせる行為は、民法90条の公序良俗に反するとして無効となる可能性があります。遺留分制度は相続人の生活保障と遺産の公平な分配を目的とした制度であり、その潜脱を専らの目的とした法律行為には一定のリスクが伴います。

なお、遺留分侵害額請求権は権利者が行使しなければ発動しません。請求するかどうかは権利者側の判断によります。


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