「親が最近もの忘れがひどくなってきた」「将来、自分が認知症になったときのことが心配」——そんなご不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
成年後見制度は、判断能力が低下した方の財産や生活を法律的に守るための仕組みです。そして2026年4月、この制度を大きく変える民法改正案が閣議決定されました。
この記事では、現行制度の仕組みと、今後予定されている改正の内容をあわせてわかりやすく解説します。
成年後見制度とは?
成年後見制度とは、認知症・知的障害・精神障害などによって判断能力が不十分な方を支援するために、後見人(サポートする人)を選任する法律上の制度です。
後見人は、本人に代わって財産の管理や契約行為を行い、本人の利益を守ります。たとえば、悪質な業者との不当な契約を取り消したり、施設への入所手続きを代わりに行ったりすることができます。
成年後見制度の2つの種類
成年後見制度は大きく「法定後見」と「任意後見」の2種類に分かれます。
| 法定後見 | 任意後見 | |
|---|---|---|
| 開始のタイミング | 判断能力が低下した後 | 判断能力があるうちに準備 |
| 後見人の選び方 | 家庭裁判所が選任 | 本人が自分で選ぶ |
| 手続き | 家庭裁判所への申立て | 公正証書で契約→家庭裁判所に申立て |
| こんな方に向いている | すでに判断能力が低下している方 | まだ元気なうちに備えたい方 |
現行の法定後見:3つの類型
現行の法定後見は、判断能力の程度に応じて3種類に分かれています。
| 種類 | 対象となる方 | サポートの内容 |
|---|---|---|
| 後見 | 判断能力がほとんどない方 | 後見人がほぼすべての法律行為を代理(権限が最も強い) |
| 保佐 | 判断能力が著しく不十分な方 | 重要な行為(不動産売買など)に同意・取消権 |
| 補助 | 判断能力が不十分な方 | 特定の行為について同意・取消権(本人の意思を最も尊重) |
どの類型が適用されるかは、医師の診断書をもとに家庭裁判所が判断します。
現行制度の課題
現行制度には「使いにくい」という声が以前から根強くありました。主な課題は次の2点です。
- 原則として途中でやめられない:一度「後見」が開始されると、本人の判断能力が回復しない限り、亡くなるまで制度が続きます。「遺産分割だけ手伝ってほしかった」という一時的なニーズには対応できませんでした。
- 後見人の権限が強すぎる:「後見」類型では後見人がほぼすべての財産行為を代理できる反面、本人の自由な意思決定が大きく制限されます。
こうした背景もあり、2024年12月時点の法定後見の利用者は約25万人にとどまっており、認知症高齢者の推計数(2025年時点でおよそ700万人)に比べてごく一部です。
【2026年法改正】「補助」への一本化で何が変わる?
2026年4月3日、政府は成年後見制度を抜本的に見直す民法改正案を閣議決定しました。2000年の制度開始から26年ぶりの大改正です。
① 3類型を「補助」に一本化
現行の「後見」「保佐」を廃止し、法定後見制度を「補助」に一元化します。支援者の名称も「補助人」に統一されます。
一本化後は、補助人に代理権・同意権を付与するには原則として本人の同意が必要とされます。現行の「補助」類型が持っていた「本人の意思を尊重する枠組み」を、すべての法定後見の共通土台にするイメージです。
② 「オーダーメード型」の導入
改正案では、補助人に与える権限を遺産分割や不動産処分など必要な範囲に限定できるようになります。「この手続きだけサポートしてほしい」という一時的・限定的なニーズにも対応しやすくなることが期待されています。
③ 終身制の廃止——「終了しやすく」なる
改正の大きな柱のひとつが「終身制の廃止」です。現行制度では判断能力が回復しない限り終了できませんでしたが、改正後は必要がなくなれば利用を終了できる仕組みになります。
必要な時期だけ使えるようになることで、制度への心理的なハードルが下がり、利用しやすい制度への転換が期待されています。
④ その他の改正ポイント
- 補助人の柔軟な交代が可能になる
- 任意後見と法定後見の併用が可能になる
改正法の施行は2028年度中が想定されています。現時点では改正案が閣議決定された段階であり、今後国会での審議・成立を経て、具体的な運用が詰められていく段階です。
成年後見制度のメリット・デメリット(現行制度)
メリット
- 財産を守れる:悪質な訪問販売や詐欺的な契約を取り消すことができます
- 手続きの代行:施設入所・医療・不動産売却など、本人に代わって手続きができます
- 家族の負担軽減:法律的な権限が明確になり、家族間のトラブルを防ぎやすくなります
デメリット・注意点(現行制度)
- 費用がかかる:申立て費用のほか、専門職後見人が選任された場合は毎月報酬が発生します
- 後見人を自由に選べない場合がある:法定後見では家庭裁判所が後見人を決めるため、必ずしも希望する家族が選ばれるとは限りません
- 一度始めると原則やめられない:2028年施行予定の改正で緩和が見込まれますが、現行制度では本人が亡くなるまで続くのが原則です
「家族が後見人になれると思っていたのに専門職が選任された」というケースも少なくありません。制度の仕組みをよく理解した上で進めることが大切です。
任意後見制度のポイント
任意後見制度は、まだ判断能力があるうちに、自分で後見人を選んで公正証書で契約しておく仕組みです。信頼できる家族や知人を後見人として指定することもできます。
ただし、実際に後見が開始されるのは判断能力が低下した後で、家庭裁判所に申立てを行い「任意後見監督人」が選任されてからになります。
2028年施行予定の改正では、任意後見と法定後見の併用が可能になる見込みです。より柔軟な組み合わせが期待されています。
まとめ
成年後見制度は、適切に活用すれば本人と家族の両方を守る強力な仕組みです。2028年度の改正施行に向けて、制度は「使いやすく・終了しやすい」方向へ大きく変わろうとしています。
「親の認知症が進んできた」「元気なうちに備えておきたい」という方は、まず専門家にご相談ください。成年後見のほか、遺言書・家族信託なども含めた総合的なご提案が可能です。
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